不動産売却と行動経済学(アンカリング効果)

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アンカリング効果

人は提示された情報を受けるとその情報を「アンカー」として判断を下します。

※「アンカー」とは船に付いている「イカリ」のことです。

ウィキペディア:「アンカリング効果」参照

それが不動産売却とどのような関係があるのか、ということなのですが、具体的に例を挙げてみましょう。

 

複数の不動産会社に不動産価格査定を依頼した

※相場価格が2,000万円の不動産と仮定します。

各不動産業者からメールや電話あるいは書類で不動産価格査定と称して金額の提示があります。

「A社:2,000万円 B社:2,200万円 C社:2,500万円」

といった具合に確実に価格にバラつきが生じます。

不動産の価格を算出するにあたっては、当然その「根拠」があるわけですが、全国一律以下のマニュアルに沿って価格の算出をします。

不動産価格査定マニュアル:「公益社団法人不動産流通推進センター」参照

不動産の価格算出は単純なものではありません。

経済・社会情勢・地価公示価格・路線価・近隣取引事例・平均所得・形状・立地・日照等々、複合的な要素により価格が決定します。

多少の「誤差」は認められるにしてもいわゆる周辺の「相場価格」と大幅に価格が乖離することはあり得ないわけです。

それではなぜ、このように「根拠」があるのにも関わらず各社価格にバラつきが生じるのでしょうか。

そしてなぜC社はA社と500万円もの差が生じたのでしょうか。

 

アンカリング効果を利用した提案手法

結論から言ってしまえば「高い金額を提示した業者に売却依頼をする可能性が高い」からです。

C社が2,500万円という金額を提示した場合、その2,500万円が「アンカー」となり、2,500万円以下の金額を提示された場合「安い」と感じてしまう現象が起こります。

本来A社は最も誠実な対応をした業者と言えるのでしょうが、逆に、最も安い価格を提示した業者というレッテルが貼られ「話すら聞く気になれない」という具合になります。

果たしてこの選択は不動産を売却される方にとって有効的な手法なのでしょうか。

 

仲介(査定)価格と買取価格は根本的に違う

多くの方が「勘違い」されていることなのですが、仲介(査定)価格と買取価格は全くの別物です。

車やバイクの買取についてはよくコマーシャルがあるかと思いますが(もちろん不動産の買取も存在します)それらの場合は「直接買取」なので「確実にこの金額で買取をします」という内容なので、複数の業者に見積り依頼をし、一番高い金額を提示した業者に売却する、という選択が正しい選択となります。

しかし、仲介(査定)価格はあくまでも「売出提案価格」であり、確実に売れるという価格ではありません。

先のコラムでも記載しましたが、不動産仲介業者は「人のふんどしで相撲を取る」わけですから、売れようが売れまいが全く腹は痛まないのです。売れなくて困るのは売主です。

C社の営業担当は内心「提案価格が高すぎたかな」と確実に感じているはずです。

それと同時に「売却依頼を獲得してしまえばこちらのもの」だとほくそえんでいます。

 

一貫性の心理につけこんだ媒介契約

相場価格よりも高い金額で売出した不動産の末路はどうなるのでしょう。

こちらも結論から言ってしまえばかなりの高確率で売れません。

販売開始から1年以上経過した、などということもざらに起こります。

稀に「隣地の人が購入した」等、特殊な例はあるにしてもそれはかなり特殊な例です。

「そんなことなら販売業者を変えてしまえばよい」と思うかもしれませんが、その際人間には「一貫性の心理」という現象が強く働きます。

媒介契約(販売契約)の期間は3ヶ月です。原則として自動更新は不可能です。

更新のタイミングで業者を変更してしまえば良いだけの話なのですが、それがなかなか出来ません。

人間は極度の「めんどくさがり」で「一度決めたことにたいしては一貫したい」という性質を持ちます。

これでまんまとC社の仕掛けた罠にはまってしまったことになります。

 

売れない不動産はない

特殊な事情のある不動産を除き、売れない不動産はありません。

なぜ売れないか、と問われたら「価格が高いから」「市場のニーズと価格がミスマッチしているから」としか言いようがありません。

確かに、ご自身が保有する不動産については「愛着」もあるでしょうし理論では測れないエモーショナルな部分もあります。

しかし、自身の感情とは裏腹に、市場はその「愛着」「エモーショナル」な部分は一切考慮しません。

そして何より、一旦市場で「明らかに高い価格」で売出した不動産は市場から「売れない不動産」というレッテルが貼られてしまい、いわゆる「鮮度」が極端に低下してしまいます。

あわてて価格変更したとしても時すでに遅し、市場からの反応がウンともスンとも言わなくなってしまった、という不動産は世の中に数えきれないほどあります。

 

不動産業者選びの重要性

高い価格提案につられてしまうことは悪いことと思いません。

ご自身の所有する不動産をほめてもられば嬉しいでしょうし、高い価格を提示されたら嫌な気はしないでしょう。

本来ならば一般の方よりも知識のある、不動産業者が根拠を示しつつ、丁寧に価格の提案をしていけば良いだけの話です。

一般の方はむしろ「犠牲者」なのかもしれません。

それらを回避するために、不動産業者は誠実に対応しているのか、提案価格は適性なのかを十分に吟味する必要がありそうです。

大手企業だから、会社に規模が小さいから、という理由だけで判断することは危険です。

あくまでも判断基準は「適正な価格」で「誠実に提案」しているか、です。

 

どのように対策したらよいか

先のコラムでお伝えした方法以外に、もう少し簡単な方法を紹介します。

①不動産ポータルサイトやチラシなどで近隣の価格をリサーチする。

②匿名で不動産会社に電話を入れ、周辺の価格を把握する。

この2つを行うだけでかなり状況が違ってきます。

先ずは、自分自身で「適正価格」を知ることがとても重要です。

そうすることで、不意に高い金額を提案されても、ご自身が「アンカー」を作っておくことで「金額に惑わされる」リスクをヘッジすることが可能です。

当然、明らかに高い金額を提示してきた業者は「不誠実」と判断出来るでしょう。

 

不動産を売却する、ということについては一生のうちに何度もあることではありません。

一度の失敗が、大きな失敗に繋がることは必至です。

そのあたり、留意しながら不動産の売却を検討していくことを強くお勧めします。

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